2014年3月27日木曜日

UFC171 感想と分析part2 ウッドリーvsコンディット

UFC171の感想と分析の続きです。以下は超個人的な意見なので参考にしなくていいです。

DALLAS, TX - MARCH 15:  (R-L) Carlos Condit kicks Tyron Woodley in their welterweight bout at UFC 171 inside American Airlines Center on March 15, 2014 in Dallas, Texas. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

画像はUFC® 171 Event Gallery | UFC ® - Mediaより

ウェルター級 5分3R
WIN タイロン・ウッドリー vs カーロス・コンディット
(2R 負傷によるTKO)

翼の折れた鳥の行く先は

DALLAS, TX - MARCH 15:  Carlos Condit lays on the mat in pain after suffering a knee injury against Tyron Woodley in their welterweight bout at UFC 171 inside American Airlines Center on March 15, 2014 in Dallas, Texas. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

翼を折られた鳥は、クルクルと回りながら落ちていった。大地に堕ちて羽をばたつかせるその姿は、目を背けたくなるほどに痛々しかった。勝敗などどうでもいい、私はその鳥が二度と空を飛べなくなることを恐れていた。

私は落ち込みながら、毎日のように彼の怪我の続報を待った。頼むから軽傷でありますように、そう願いながら海外のMMAサイトを片っ端からクリックした。

試合から数日後、私は見出しにtorn ACLという文字を見た。その横には彫りの深い男の写真が載っていた。

私は少しの間、MMAのニュースを見る気が失せてしまった。

「ナチュラルボーン・キラー」カーロス・コンディット、かつてニック・ディアズを破って暫定王者に輝き、「ラッシュ」ジョルジュ・サンピエールからダウンを奪った天性の殺し屋は、前十字靭帯を損傷して敗北した。現在彼は手術を予定しており、復帰のめどはまったく立っていない。

王座への道は、遥かに遠のいたのだ。

There goes my Hero.

Condit vs. MacDonald

私が最初にこの男の試合を見たのはローリー・マクドナルド戦だった。名前だけは記憶にあった。おそらく日本の大会か何かで見ていたのだろう。その試合は名勝負だった。距離を巧みに操り、相手の攻撃をするすると受け流し、そして最後の最後でマクドナルドを捕えて仕留めきった。

彼はその後も素晴らしい戦いを量産していった。ダン・ハーディをフックの打ち合いで沈め、その後タフで知られる韓国人の中でも、一際フィジカルに優れるキム・ドンヒョンの意識を芸術的なまでのフライング・ニー一発で刈り取った。

Carlos Condit knocks out Dong Hyun Kim.

いつしかこの男の戦いに魅了され、彼の試合を心待ちにするようになった。私は時の王者ジョルジュ・サンピエールよりも、このアルバカーキ出身の男の方が好きだった。そしていつか、この男がベルトを巻いてくれることを心から願うようになっていた。

なぜこの男をそれほどまでに応援しているのか、不思議に思う人もいるだろう。特に当時は不動の王者だったGSPの他にも、その破天荒で攻撃的なスタイルで圧倒的人気だったニック・ディアズがいた。だが私はこの男のほうに惹きつけられた。

その理由を巧く説明できる自信はない。あえて言葉にするならば、この男の戦い方は美しかったのだ、と私は思っている。彼の打撃は舞うようだった。動く姿は、赤茶けた岩山を飛び交う大きな鷲を連想させた。ウェルターでは大きい187センチという身長が、その動きに雄大な印象を与えていたのかもしれない。

その美しさの源は、冷え切った頭と燃えたぎる心臓の両立にあった。どんな苦境に立たされようと、どれほど不愉快な挑発を受けようと、観客からの渦巻くようなブーイングに晒されようとも、この男はいつも涼しげな顔をしていた。ニック・ディアズ戦が一番わかりやすいだろう。あの時、会場にコンディットの味方はほぼいなかった。試合前、そして試合中の「足を止めて拳で殴り合え」という、選手に戦い方を強要する極度の圧力がコンディットにのしかかる中、彼は決してそれに屈しなかった。小声で何度も挑発を繰り返し、手を広げて執拗に顔面への攻撃を誘導するニック・ディアズに対しても、彼は一切のること無く、淡々と仕事をこなして勝利したのだ。

LAS VEGAS - FEBRUARY 04:  Carlos Condit (left) kicks Nick Diaz during the UFC 143 event at Mandalay Bay Events Center on February 4, 2012 in Las Vegas, Nevada.  (Photo by Nick Laham/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images) *** Local Caption *** Carlos Condit; Nick Diaz

試合後、彼は笑顔でその挑発を振り返った。「スピニング・シット」という言葉に思わず笑いそうになったよと、彼は子供のような笑顔で語った。私は本当の男らしさを、ディアズよりもコンディットのほうに見出した。相手の策略にまんまと乗ることを強要するファンと、そしてそれを美徳とするメディアがまだ大多数だった時代だ。今ほどに戦略に理解が無かった時に、これを実行するのがどれほど難しいことだっただろうか。

そしてコンディットの心臓は常に紅蓮の炎に包まれている。いつだって彼はKOを狙っていた。ディアズ戦ですらそれは例外ではなかったと私は思っている。無謀にも相手の得意な領域に突っ込んで、強打を振り回すのはもはやギャンブルですらないだろう。本当のKO狙いとは、辛抱強く試合を自分のほうに手繰り寄せていき、その結果として生まれたチャンスを掴むことだ。それに早いか遅いかの違いがあるにすぎない。相性が良ければ開幕の一撃で決まるだろうし、悪ければ判定になることもあるだろう。だがその過程での作業は一緒なのだと私は思う。そしてコンディットは、いつだって最後の最後まで辛抱強く、相手を仕留めきることを考えて戦っていた。

MONTREAL, QC - NOVEMBER 17:  A cut and bloodied Carlos Condit reacts after a round against Georges St-Pierre in their welterweight title bout during UFC 154 on November 17, 2012  at the Bell Centre in Montreal, Canada.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

だからコンディットにはいつも一発逆転の期待感があった。「ラッシュ」ジョルジュ・サンピエールとの王座戦での左ハイ一閃で、それを理解してもらえることだろう。若しくはその次の試合である、現王者ジョニー・ヘンドリクスとの後半戦を思い出してもらってもいいし、前半はTDされながらも、圧倒的な手数で相手を削り倒して勝利したマルティン・カンプマンとの再戦でもいい。独特の試合のリズムに相手を巻き込み、そして最初は不利に思えた試合もいつの間にか形勢が変わってしまう。

それを可能にしていたのが彼のハートの強さだ。鉄火場で動じないから、彼は決して力まなかった。力みが少ない彼の体は、あらゆるハード・ヒットを受け流し、KOされることを防ぐ柔軟性を確保していたのだ。日本でも柳のように受け流すという表現があるが、私はコンディットの打たれ強さの秘訣はまさにそれだったのだと思っている。そしてそれは心臓の強さによって実現したものだ。恐れなければ、体は硬直しないからだ。彼の勝負強さの秘訣は、この鉄の心臓にあったのだと考えている。

うまく伝えることができただろうか。端的に言えば、私の描くヒーロー像は徹底して勝ちにいく完璧超人のGSPでも、殴り合い上等の悪童ニック・ディアズでもなかったのだ。私のヒーロー像は、どんな窮地でもおどけて見せる余裕を持ち、そしてここぞで死地に飛び込むリスクを負うことのできる、カーロス・コンディットという男だった。

狙われた殺し屋、敵の術中に嵌る

DALLAS, TX - MARCH 15:  (L-R) Tyron Woodley punches Carlos Condit in their welterweight bout at UFC 171 inside American Airlines Center on March 15, 2014 in Dallas, Texas. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

試合内容は完敗だった。理由は三つだと考えている。一つは彼が距離を掴めなかったこと、ウッドリーが以前とは別人なほどに成長していたこと、そしてもう一つは、殺し屋が明らかに気負ったことだ。

1Rが始まると、ウッドリーは大きく距離を取る。徹底的に研究されていると思った。コンディットの最大の武器は長射程の打撃にある。特にジャブのように早く、コンパクトに数を出してくる細かい蹴りが彼の一番の攻撃手段だ。だから中途半端な距離の取り方では、蹴りで削られて試合の経過と共に劣勢になっていく。ウッドリーはこの距離の射程外に出た。

そしてコンディットが近づいて蹴りを出そうとするタイミングで、ウッドリーはステップインからの右ストレートを叩き込む。これが開幕からクリーンヒットした。ローを出そうとしたコンディットはそのまま後ろに弾き飛ばされていく。ウッドリーはここ最近飛躍的にパンチが巧くなっている。対するコンディットは合間にローやハイを織り交ぜて返していくが、距離をしっかりと取るウッドリーへの命中率は低い。パンチの技術では明らかに負けていた。

クリンチの展開でも分が悪い。身長で劣るウッドリーに両脇を差されて中々に脱出できない。さらには強烈な膝も貰う。このあたりから、コンディットは明らかに過剰にアグレッシブになりつつあったと思う。攻めようと気がはやるあまり、コンディットは不用意に前に出過ぎた。金網を背負ったウッドリーに一気に距離を詰めると、近すぎる距離でラッシュをしようとした瞬間だ。ウッドリーは狙いすましたように、腰が完全に起きているコンディットにダブル・レッグを仕掛けると容易くマットに叩き付ける。下からの攻めが得意なコンディットはラバーガードをしつつ、下から執拗にパンチを浴びせて三角締めを狙った。だがウッドリーはそれを力で持ち上げると、そのままマットに投げ捨てる。反動を使ってすぐに起き上ったコンディットだが、分が悪い印象は拭えない。

さらにその後、またしても射程外に逃げるウッドリーを無理に追うコンディットは、届かない距離でハイキックを繰り出した所を、狙いすましたウッドリーのタックルに捕まって危険な体勢でマットに叩き付けられた。

2Rになると、コンディットはなおも合わない距離のまま無理に攻めていく。さらに下がるウッドリーのパンチも同様に当たらなくなりつつあった。だが、コンディットはここでまたしても前に出過ぎると、ラッシュの終わり際を狙って再びウッドリーがTDを狙う。コンディットは一瞬耐えたが、ウッドリーは強引に引き抜くとそのままなだれ込むようにマットに叩き付けた。

DALLAS, TX - MARCH 15:  (L-R) Tyron Woodley takes down Carlos Condit in their welterweight bout at UFC 171 inside American Airlines Center on March 15, 2014 in Dallas, Texas. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

この瞬間、コンディットの顔が苦渋に満ちたものとなる。この時に足が下敷きになったのだろうか、ここで負傷したのだ。すぐにガードの体勢を取り、パウンドを防ぎつつ下から抵抗したおかげで危険な追撃は避けることが出来た。そしてウッドリーが肩固めを狙う素振りを見せたところでブレイクがかかる。

この直後だった。金網に詰めたコンディットがウッドリーの右を貰って距離を取ると、ウッドリーが突如前に出て強烈な右のローキックを叩き込んだ。

DALLAS, TX - MARCH 15:  (R-L) Tyron Woodley kicks Carlos Condit in their welterweight bout at UFC 171 inside American Airlines Center on March 15, 2014 in Dallas, Texas. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

それがクリーンヒットし、コンディットの体が流れた瞬間だ。コンディットは飛び上がり、空中をきりもみしながら足を抱えてマットにもんどりうった、それも蹴られた方とは逆の足を抱えて-。会場はあっけにとられた。レフェリーが駆け寄り、コンディットの様子を見てすぐさま試合を止める。あのコンディットが、忍耐の塊のような男が痛みにのたうち回るほどなのだ。観客の全てが、この戦士に何か深刻な事態が起きた事を理解した。

ローで左足が流れて片足立ちになった時、もはやコンディットの右足は一本で彼の体重を支えることができなくなっていたのだろう。彼の体重がかかった瞬間、傷ついた靭帯がとうとう限界を超えてしまったのだ。

試合はタイロン・ウッドリーの勝利となった。怪我によるTKOだが、これはウッドリーのタックルがもたらしたKOと言っていいだろう。それくらいに完璧な体勢のスラムだったからだ。投げも立派な攻撃手段であり、受け身が取れなければそのダメージは容易に人体を破壊する。

タイロン・ウッドリーはこの試合をデイナ・ホワイトに何度も何度もメールで嘆願したのだという。その時彼のランキングは11位、そしてカーロス・コンディットは2位だった。ウッドリーは狙っていたのだ、自分が一番勝てそうな上位陣を。そしてそれは入念に分析されたものだったと思う。そのことは試合内容から明らかだった。

まず、タイロン・ウッドリーの距離は完璧だった。ウッドリーのリーチの無さを考えれば、あれくらい取らなければまず被弾するだろう。コンディットを相手に一番気を付けるべきは、細かい蹴りでじわじわと削られることだ。足や腕、腹を細かく蹴られ続ければ必ず殺し屋に捕まってしまう。ウッドリーは最適な距離を把握していた。

DALLAS, TX - MARCH 15:  (R-L) Carlos Condit kicks Tyron Woodley in their welterweight bout at UFC 171 inside American Airlines Center on March 15, 2014 in Dallas, Texas. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

そして攻撃手段も確立されていた。射程外に出て様子をしっかりと見ていく。そしてコンディットに隙があれば、現王者「ビッグリッグ」ジョニー・ヘンドリクスのように高速のステップインで一気に距離を詰めて強烈な一撃を叩き込むのだ。特にコンディットが攻撃を仕掛ける前か、遠すぎて空振りした打ち終わりを良く見て狙っていた。コンディットは直撃を受けた。ぐらつきはしなかったものの、確実にダメージはあっただろう。

同様のタイミングで、ウッドリーはタックルを仕掛けていった。こちらが本命のように思う。元々コンディットは速い蹴りをコンビネーションで出す都合上、どうしても腰が起きてTDに脆いというスタイル上の欠点がある。体格と相まって、これまでコンディットはスタンドではかなりの優位を保っていた。だがウッドリーはその射程外に逃げ、コンディットの蹴りで捉えられないほどに距離を取った。コンディットはこの距離の修正が出来なかったのだ。無理に遠すぎる距離で蹴りを振り回したせいで、彼の蹴り終わりには隙が出来た。ウッドリーはそれを狙っていったのだ。

コンディットは研究され尽くしていたように思う。そしてそれに焦り、不用意に攻めすぎたのがコンディットの最大の失策だ。もっと相手をよく見て、ウッドリーが余りにも下がり続けていることに気づいて追うのをやめるべきだったと思う。だがそうさせなかったのは、ウッドリーの飛び込み右ストレートだったのだろう。中途半端な距離で足を止めたらあれを被弾する、コンディットはそう判断したのではないだろうか。

天性の殺し屋はこれまでずっと狙う立場だった。だが彼はいつしか、狙われる立場になっていたのだ。

一つの仮説、コンディットを苛む強迫観念

MONTREAL, QC - NOVEMBER 17:  Carlos Condit look on before his welterweight title bout against Georges St-Pierre during UFC 154 on November 17, 2012  at the Bell Centre in Montreal, Canada.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

ただ一つだけ思うことがある。これは私の仮説であり、本人すらもわからないことかもしれないが、コンディットの心には小さな棘が刺さっていた。そしてそれが少しずつ、確実に彼の心を蝕んでいたのではないか?。彼は、攻撃的であらんとすることを過剰に意識しすぎてはいなかっただろうか?きっと棘が刺さったのはニック・ディアズ戦だ。彼は気にしてないとは言っていた。だが本当にそうだろうか?試合ごとにあがる評価、盛り上がる人気、そしてその度に引き合いに出されるあの試合の消極性・・・たとえそれが事実ではなかったとしても、その蓄積がコンディットから冷静さを奪ったのではないだろうか。

距離の合わない相手に無理に攻めて、そこを狙われて攻撃を叩き込まれていく。既視感がある。これはコンディットと戦った時のニック・ディアズそのものだ。ニック・ディアズは蹴りの距離を維持するコンディットを無理に殴りに行き、打ち終わりを下がったコンディットに狙われて次々に蹴りを打ち込まれた。彼はかつて自分がやった方法を、そのままウッドリーにやられたのだ。ディアズはあの時頭に血が上り、距離をどうにもできずに負けていった。コンディットは何をしてはいけないのかわかっていたはずだ。罠を張った相手を無理に追うなど、愚策中の愚策だったはずだ。

彼は黒星も重ねていた。知らず焦りもあったのかもしれない。ここ数戦はどれも、悪くはないが無理に攻めすぎている感があったようにも思う。どこかに「攻めなければならない」という過剰な重圧を感じていたのではないか、と私は少し感じている。そしてそれが、スタイルの変更を難しくしている要因でもあるかもしれない。

急成長を遂げるウッドリーとレスラーの「ワンパンチ」

だがこの試合は、ウッドリーを称賛するべきだろう。完全な仕事だった。かつてストライクフォースでネイサン・マーコートにKOされ、シールズに判定で負けていた時には予想だにしなかった姿だった。彼はMMAへの転向が比較的遅かった。それはライトヘビー級の王者候補、ダニエル・コーミエによく似ている。彼は26歳でプロデビューした。それから着実に成長し続けたのだ。以前は身体能力ばかりという印象だった。だがUFCという大舞台に移ってから、彼には大きなモチベーションが生まれたのかもしれない。コスチェック戦で信じられないほどの打撃技術を披露したあたりから、彼は恐らく何かを掴んだのだろう。

レスラーでありながら目も優れている。ヘンドリクス、コーミエ、そしてウッドリー。彼らは皆似た戦い方をするが、特筆すべきはただのボクシングとも違う気がする、遠い距離から飛び込んでの強烈な一撃だ。何かこの共通項には意味があると感じており、今この手の打撃を注視している。ウッドリーは実力が花開いた。彼のパンチとタックルは、これからのウェルター級で脅威となっていくだろう。

DALLAS, TX - MARCH 15:  Tyron Woodley reacts after defeating Carlos Condit in their welterweight bout at UFC 171 inside American Airlines Center on March 15, 2014 in Dallas, Texas. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

ヒーローは遅れてやってくる

そして今回負けたコンディットだが、彼にはずっと欠けている物がある。TD防御は言うまでもない。もう一つはパンチの技術だ。パンチは決して巧くない。蹴りとTD防御主体の王者はいる。ヘナン・バラオン、ジョゼ・アルド、アンソニー・ペティスなどがそうだろう。彼らは蹴りを巧く使うが、そこには十分なパンチの技術も存在しているのだ。特にアルド、バラオンのパンチ技術は凄まじいものがあるだろう。タックルを混ぜる相手に必要なのは、体勢を崩さずに相手を止める力を持つコンパクトで鋭いパンチだ。これはジュニオール・ドス・サントスやアンデウソン・シウバ、そしてペティスのタイトル戦でも明らかなことだろう。TD防御をするためにも、コンディットに必要なのはパンチの技術だと思っている。

もっとも、今は改善点の話は早計だろう。それ以前に、彼がこれから現役を続けられるかどうかも今だ不透明なのだ。手術をしても確実に治る保証はない。バンタム級の王者であったドミニク・クルーズは同様の怪我を負った後に手術をしたが、リハビリ中の怪我などが重なり2年以上経った今もオクタゴンには帰ってきていないのだから。

今はただ、彼の翼が治ることを祈るのみだ。ベルトが彼を待っている。本当のヒーローは、いつだって遅れてやってくるものなのだ。再び金網の上を優雅に舞うあの男の姿を、私は今日も心の中に描き続けている。私のヒーローの、戦う姿を。

MONTREAL, QC - MARCH 16:  (R-L) Carlos Condit kicks Johny Hendricks in their welterweight bout during the UFC 158 event at Bell Centre on March 16, 2013 in Montreal, Quebec, Canada.  (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)

10 件のコメント:

  1. 私見なんですがMMAで蹴り主体というのは膝に負担かかり過ぎるのかなと
    ペティスにしてもよくやるし

    あと確かにレスラーのステップインパンチは凄いですよね
    パンチ力はあの上体から納得ですが
    ステップインはタックルの応用でしょうか

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    1. 確かに蹴り主体の人は膝を壊しやすいかもしれませんね。タックルを不安定な状態で受けることが多いからというのはある気がします。今回コンディットは2回ほど足を下にして横倒しに倒れていましたが、あれはかなり危ないなと感じました。

      レスラーのステップインからのパンチは異常なスピードと破壊力ですよね。ご指摘の通り、レスラーはタックルなどで鍛えられてるせいで瞬間的な地面を蹴る力が凄まじいのだと思います。恐らくその蹴る力があの破壊力を生み出しているのでしょう。ヴェラスケスのステップ・ジャブも同じものだと思います。

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  2. 更新されることを楽しみにしている、大ファンのひとりです。
    読んでいて泣けてきました。

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    1. いつも読んで頂いてありがとうございます。楽しみと言っていただけるとコンディットの敗戦で傷ついた心が癒されますw

      私は泣きそうになりながら書いていましたw試合を見直してたら悔しくて・・・。

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  3. 傷心の中での更新、お疲れ様でした。
    私はK-1から格闘技にハマったので、UFCでもキックを有効に使える選手を贔屓して観てしまいます。
    なのでコンディットは非常にお気に入りの選手であり、今回の件は私も非常にショックです。
    一応、自分でもキックボクシングをしてるのでコンディットの復活を陰ながら応援するべく
    コンディットモデルのファイトショーツを購入し最近はそれを身に付けて練習しています(ただの自己満ですが…)。

    同様の怪我をGSPが乗り越えてますから、GSPに劣らぬ精神力を持ったコンディットもきっと乗り越えてくれると信じています。
    試合の流れたマットブラウン、借りのできたウッドリー、借りを返そうと目論むロリマクと群雄割拠のウェルターには
    コンディットが倒すべき相手はゴロゴロしているので
    一つずつクリアしボスキャラのジョニヘンまで辿りついて欲しいですね。
    まー、復帰戦の際は最近すっかりやられキャラのコスチェックを派手にKOして復活をアピールとかで良いと思いますがw

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    1. 一週間くらいたって、渋々感想を書き始めましたw更新が遅れて申し訳ありません。

      貴重なコンディットファンと聞いて嬉しいです!カッコいいですよね、ショーツと合わせてあの髭も是非お願いしますw

      GSPは奇しくも同じ個所をこないだ負傷してしまったそうですね。膝の怪我は本当に心配です。二人で仲良くリハビリとかして欲しいですね。

      ウェルターはここに来てコンテンダーが多くて大変です。個人的にはロリマクとエレンバーガーに頑張ってほしいところです。とにかくタックルへの対処がなんとかならないと、ジョニヘンとウッドリーが鬼門になりそうな感じです。

      それにしてもコスさんの扱いがヒドイwww最近は被KOアーティストになりつつありますね。ローラーとウッドリーの完全な踏み台になってしまいました。でも何気にコスさんとコンディットって結構興味あるカードです。

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  4.  ロングレンジMMAのパイオニアであるコンディットの完全復活をみんなで待ちましょう!
     世界一の激戦区UFCウェルター級がジョニヘン、ウッドリー、ロンバートの筋肉団子三兄弟に支配されかけています。ローラーの兄貴、サイコなローリー、ジャガーノートとの抗争は楽しみではありますが、肉団子ハードパンチャー達が幅をきかせすぎると胃にもたれる恐れが、、、

     GSPにリハビリの先生を紹介してもらって、十字懸垂ができるぐらいフィジカルを強化してもらいましょう!
     

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    1. 肉団子三兄弟、まさか今頃アメリカでブームになるとは思いませんでした。子供に深刻なトラウマを残しそうです。

      ロンバートは少し毛並が違いますが、あとの二人は同じレスラー肉団子タイプじゃないと攻略が難しそうなのも胃もたれの原因かもしれません。コンディットみたいな個性的なスタイルはほんと貴重だったんですが・・・。

      GSPは頼めばいい医者教えてくれそうですよね。二人が一緒にリハビリしてる動画が見られるのなら金を払っても構いませんw

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  5. レスラーでパンチが強い人の代表として数年前に山本キッドがゴンカクでインタビューを受けていたのですが、はっきりアマレス技術の応用だと断言してましたね。彼に言わせると、ボクシングのハメドのパンチの打ち方が奇しくもレスラーのパンチに似てるのだとか

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    1. なんと!やはりあのステップインパンチはレスリング技術の応用だったんですか。体ごとぶち当てるというか、パンチというよりは体当たりみたいな打ち方ですよね。確かにアマレスのタックルと同じスムーズな重心移動を感じます。だとすればKIDさんが足を怪我してから一気に低迷したのも納得です。

      貴重な情報ありがとうございましたwもうちょっと分析してみます。

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